はじめに:AI コーディングエージェントの「無分別な修正」問題

昨今、AI コーディングアシスタントが主流になりつつありますが、実際に使ってみると 「AI が勝手にコードを書き換えてしまった!」 という経験、一度はあるのではないでしょうか。特にレガシープロジェクトや大規模リファクタリングの際に、AI が想定外のファイルを修正してしまい、困った経験は私も何度もあります。

この問題の根本原因は、「分析」と「実行」が分離されていない という点にあります。AI がリクエストを受けるとすぐにコードを修正しようとするため、意図しない副作用が発生してしまうのです。

Google がこの問題に正面から取り組んだ機能、それが Gemini CLI の「Plan Mode」 です。本記事では、Plan Mode とは何か、どのように使用するか、そして実務で注意すべき点について詳しく解説します。

Developer using Gemini CLI with plan mode on terminal for code planning Software Concept Art

Plan Mode とは?(Read-Only 分析モード)

Plan Mode は Gemini CLI の 読み取り専用 (Read-Only) モード です。その核となる考え方は非常にシンプルです。「まずは分析から始めよう!」

従来は AI に対して「このデータベースをマイグレーションして」と依頼すると、すぐにコードを修正し始めていました。しかし Plan Mode では、以下のように動作します:

  1. 分析優先: コードベースを探索し、依存関係を把握し、変更計画を立案します。
  2. ユーザー確認: AI が計画を提案し、ユーザーがレビュー・承認します。
  3. 実行: 承認された計画に基づいてのみ、実際のコード修正が行われます。
# Plan Mode への入り方(3通り)
# 1. 入力欄に /plan と入力
# 2. Shift+Tab で承認モードを順に切り替え
# 3. AI に直接 "start a plan for..." と依頼

# 例:データベースマイグレーションの計画を依頼
gemini> research how to migrate this database from MySQL to PostgreSQL

# AI が分析を開始し、以下のような質問をしてくることがあります
# "マイグレーション中のダウンタイムは許容されますか?"
# "既存データのサイズはどのくらいですか?"

Plan Mode で使用される主要なツールは以下の通りです:

  • read_file:ファイル内容の読み取り
  • grep_search:パターン検索
  • glob:ファイルパスパターンマッチング
  • codebase_investigator:複雑なシステム依存関係の分析
  • ask_user:ユーザーへの直接質問(これが重要!)

Laptop screen showing Gemini CLI plan mode analysis and codebase investigation IT Technology Image

実務適用のポイントと注意点

1. ask_user ツールの重要性

Plan Mode の最も強力な機能は、AI が分からないことを認めて質問する という点です。従来の AI ツールは推測したりデフォルト値を仮定したりしていましたが、Plan Mode では ask_user を通じて:

  • 特定のアーキテクチャ選択の確認
  • 隠された設定ファイルの場所
  • ビジネスロジックの意図

これらを直接尋ねてきます。これは 開発者の意図を尊重する第一歩 と言えるでしょう。

2. Conductor との連携(高度な機能)

より複雑なプロジェクトを扱う場合は、Conductor 拡張機能を使用できます。Conductor は Plan Mode をベースに マルチステップ開発ワークフロー をオーケストレーションします。

例えば、大規模なマイグレーションプロジェクトの場合:

  • ステップ1:事前チェックとリスク分析(Plan Mode)
  • ステップ2:各マイルストーンでの確認(ask_user)
  • ステップ3:段階的実行

といった流れで進行します。まだ Gemini CLI に組み込まれてはいませんが、近い将来デフォルトモードとして統合される予定とのことですので、期待して待ちましょう。

3. 日本開発環境における適用コンテキスト

日本のエンタープライズ / スタートアップ環境において、この機能は特に有用です。理由としては:

  • レガシーコードが多い環境: 安易に修正すると副作用のリスクが大きい
  • 協業が重要な組織: Plan Mode で生成された計画をチームレビューに活用可能
  • 規制遵守の必要性: 金融・公共プロジェクトにおいて「変更履歴」と「事前承認」プロセスに適合

ただし、Plan Mode が完璧というわけではありません。以下のような限界を認識しておく必要があります:

  • 分析に時間がかかる: 大規模プロジェクトでは初期分析に時間を要する
  • 質問が多すぎる可能性: ask_user が頻繁に呼ばれると、かえって生産性が低下する
  • モデル依存性: 高い推論能力を持つ Pro モデルでより正確な計画が可能

Cloud infrastructure diagram with Gemini CLI plan mode integration Technical Structure Concept

まとめ:あなたのワークフローに Plan Mode を統合する方法

Gemini CLI の Plan Mode は、AI コーディングエージェントの成熟度を一段階引き上げた機能 です。単なる「コードを素早く書いてくれるツール」から「一緒に考え、設計するパートナー」へと進化したと言えるでしょう。

すぐに実践できるヒント:

  1. 新機能の開発を始める際は、まず /plan から始めてみてください。
  2. AI が提案した計画をチームメンバーと共有してみましょう。コードレビューの時間が短縮されるはずです。
  3. ask_user の質問に誠実に答えるほど、より良い結果が得られます。

Plan Mode が合わない場合は /settings から簡単に無効化できますので、気軽に試してみてください。(設定画面で 'Plan' を検索してトグル)

AI と共に働く新しい方法を模索しているなら、今すぐ Plan Mode を試してみることをお勧めします。次のステップとして、Conductor 拡張機能 との連携を調べてみると、より深いワークフローを構築できるでしょう。


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